人工知能
Online ISSN : 2435-8614
Print ISSN : 2188-2266
人工知能学会誌(1986~2013, Print ISSN:0912-8085)
階層的パターン統合処理に基づく視覚情報処理モデル
佐藤 俊治
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2000 年 15 巻 6 号 p. 1004

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抄録

本論文は神経生理学や心理学的知見を導入して, パターンの多様性に影響されない視覚神経回路網モデルの構築を目的としており, 6章より構成される.第1章の「序論」に続いて, 第2章では, 既に提案されている視覚神経回路網モデルであるネオコグニトロンの構成・学習方法について定式化するとともに, 回転したパターンに頑健性がないことを実験により確認した.第3章では, 新しいボトムアップ型神経回路モデル(回転対応型ネオコグニトロン)を提案している.実際に手書き数字を用いた数値実刑により, パターンの変形・位置ずれ・拡大縮小・ノイズだけでなく, パターンの回転にも完全に頑健であることを示した.第4章では, 回転対応型ネオコグニトロンを含むネオコグニトロン型神経回路モデルの学習過程を解析し, その結果から高速に学習を行なうアルゴリズムを提案している.本アルゴリズムを用いることで, 認識性能に影響を及ぼすことなく, 学習時間が約1/680に短縮することを確認している.第5章では, 回転した文字を必ずしも瞬時に認識せず心的回転により初めて認識するというヒトの認識機能を実現する視覚モデルを提案している.数値実験により, パターンの多様性に頑健であることを明らかにした.また, 鏡像回転パターンに対する提案モデルの挙動が心理学的事実と符号するという興味深い結果も得られた.第6章「結論」では本論文の成果をまとめ, 今後の課題を述べている.

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© 2000 人工知能学会
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