人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
脳における文の意味解析機構のモデル
一杉 裕志高橋 直人
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2018 年 2018 巻 AGI-008 号 p. 06-

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抄録

大脳皮質の言語野における、意味解析機構の形式的モデルを提案する。このモデルは、計算論的神経科学における大脳皮質ベイジアンネット仮説と、理論言語学における組み合わせ範疇文法の理論を融合させたものである。文の意味は、アドレスと意味表現からなる組の集合で表される。この表現方法のおかげで従来意味論の記述に用いられてきたラムダ計算が不要になり、可変長の値を持つ変数を一切用いずに、統語素性の単一化の機構だけを用いて意味解析することが可能になる。このため、提案モデルは神経科学的に妥当なベイジアンネットでの実現がおそらく容易である。文法と意味の処理は局所化されているため、モデルの一部を破壊することで、ブローカー失語とウェルニッケ失語に似た発話を再現できる。これらの結果は、大脳皮質ベイジアンネット仮説に対する、新たな状況証拠を与えている。

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© 2018 著作者
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