人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
法令沿革オントロジーの設計
内田 勇志駒水 孝裕小川 泰弘外山 勝彦
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2019 年 2019 巻 SWO-047 号 p. 16-

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抄録

日本政府は「電子行政オープンデータ戦略」に基づきオープンデータを推進している.法令に関してはXML形式で現行法令が総務省「e-Gov法令検索」より提供されており,その他の行政機関等が保有するさまざまなデータも公開されている.民間事業者等がこれらの情報をさらに利用しやすくするためには,オープンデータの次の展開として Linked Open Data(LOD)が望まれる.行政は法令のもとに執り行われるので,行政機関等が保有するデータをLOD化する際に,RDFデータセット間を相互にリンクするためのハブとして法令のRDFデータセットが有用であると考えられる. 日本では一部改正法令を制定し,法令の改正を行う.一部改正法令には元の法令に対するテキストの挿入・削除・置換が定められており,法令の一部改正においては元の法令のテキストが変更される.したがって,法令の改正は法令文書データのバージョン変更と捉えることができる.法令は不遡及の原則や経過規定などから,過去のバージョンが必要になることが多い.すべてのバージョンが提供されていない限り,過去のバージョンを取得するためには,その時点の直前に行われた改正を見つけ,その改正が反映されている法令集を探す必要がある.これを実現するためには,法令の新規制定や改廃の経過である法令沿革の情報が必要であるが,法令沿革は国立国会図書館「日本法令索引」にてHTML形式でしか提供されていない.これらのことから本研究では,法令LOD,特に法令沿革情報を扱うLODを構築するために法令沿革のオントロジーを設計する. 本研究では,バージョンごとに個別のURIを定義して法令文書データを管理し,法令のバージョンを束ねる抽象概念としての法令(抽象法令)を導入する.これにより抽象概念としての法令と改正のたびに変化するテキストを分離して考えることができる.この法令文書データと抽象法令を基本に法令沿革のオントロジーを設計した. 本研究では,法令のうち法律のみを対象とし,2015年に「日本法令索引」から取得した法律13,440本(明治19年2月から平成27年6月まで)を用いて法令沿革LODを構築した.構築した法令沿革LODに対してSPARQLを用いてデータを取得したり,簡易的なアプリケーションを作成したりして,設計したオントロジーが有用であることを確認した.

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© 2019 著作者
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