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"item_10002_textarea_187": {"attribute_name": "異なりアクセス3", "attribute_value_mlt": [{"subitem_textarea_value": "②書評 : 勝田政治・眞保昌弘・仁藤智子・秋山哲雄・夏目琢史・久保田裕次・石野裕子著『日本史概説 : 知る出会う考える』\n\n 『日本史概説―知る・出会う・考える』(以下、「本書」と略記) は、「日本史概説」というタイトルの通り、日本の原始から現代までの通史が、国士舘大学文学部史学地理学科に所属する七名の先生方によって執筆されている。日本通史を各時代の専門家が一書ずつ書くシリーズ本が刊行されることは少なくないが、本書のように、一書で通史を叙述し、研究にもいざなうレヴェルでのテキストとしてまとめたものは決して多くない。ましてや、同じ大学に所属する複数の教員で一書をまとめるとなると、その苦労は想像に難くない。その意味で本書は、組織的に日本史を叙述することに挑戦した意欲的な著作と言える。以下、本書の概要およびその意義や評者が考える論点・課題について述べることにしたい。\n\n一 本書の趣旨と概要\n 1 日本史概説A・Bの授業と本書\n 本書は、国士舘大学文学部で開講されている「日本史概説A (日本歴史A)」「日本史概説B (日本歴史B)」のテキストとして使用することを前提としたものだという。両授業は、文学部史学地理学科考古・日本史学専攻 (コース) において1年次の必修授業となっている。「日本史概説A」「日本史概説B」両授業の概要、ねらいおよび到達目標は、二〇二〇年度のシラバスによると《表1》のように示されている。\n まず、【概要】について、本書との関係で気になるところを2点あげる。第一に、日本史概説A・Bは、日本の原始・古代・中世・近世・近代・現代を、通史的に講義を通じて理解することがあげられている。各時期を専門とする教員六名が、オムニバス方式で一年間かけて学ぶ授業である。第二に、日本史概説A (原始・古代・中世) では【ねらい】との関係で、歴史的な史資料とのつながりを通じて学ぶことが示されている (《表2》)。一方、日本史概説B (近世・近代・現代) では、【概要】に「各時代とも当時の国際関係 (世界史) に留意する」とあり、史資料については触れられていない。これは逆のことも言え、日本史概説A (原始・古代・中世) には「国際関係 (世界史) に留意する」ことについては触れられていない。史資料の扱いや国際関係 (世界史) への留意することについては、本書の編集方針とも関連しそうなので、後述したい。\n 次に、【ねらい】【到達目標】について、本書との関係で気になるところを2点あげる。第一に、「歴史学が「考える学問」であること」を前提に、「暗記一辺倒」ではないスタンスで、日本史概説A・Bの授業が展開することが宣言されている。第二に、「歴史学的 (な) 思考能力を養う」ことが明示されている。なお、これについては、【到達目標】にも通史的理解によって、「歴史学的な思考力を身につけ、発信すること」(日本史概説A)、「歴史学的思考力を身につけること」(日本史概説B) が明記されている。「歴史学的 (な) 思考 (能) 力」とは何か、この点については、本書との関係で後述したい。\n このように、日本史概説A・Bの授業は、「歴史学的 (な) 思考 (能) 力」を身につけるために、6名の各時代の専門家の講義を通じて、日本の原始から現代までを通史的に学ぶものである。そして、その歴史学的な内容を「考える」ツールとして、本書が機能することが想定されているのであろう。\n\n第1部一原始・考古篇歴史誕生・国家成立への軌跡\n《概要》七○○万年以上前に誕生した人類の世界的拡散と、三万年以上前に日本列島に渡来した新人(ホモⅡサピ\nエンス)の話から始まる。第1部では、考古学の成果をふまえて、旧石器時代における「日本人」の形成、縄文時\n代における生活の多様性、弥生時代における農耕と邪馬台国の実態、古墳時代における古墳造営の意味、飛鳥,奈\n良時代における仏教の影響や宮都造営および地方支配に関わる施設などが叙述されている。\n2本書の概要\n本書は、第1部〜第6部で構成されている。各部冒頭には「概観」と「年表」がついており、テキストの概要の\n把握と記述されている主な出来事が確認できる。各部の見出しと概要は次のように整理できる。\n\n勝田政治・眞保昌弘・仁藤智子・秋山哲雄・夏目琢史・久保田裕次・石野裕子著「日本史概説一知る‘出会う.考える」\n第4部雨陶陶画泰平の時代へ\n《概要》応仁の乱の背後で起きていた大きな社会変動(技術革新にともなうモノの量産化と地方の活性化による生\n活レヴェルの向上)に注目することで、.五世紀」がどのような時代だったのかを紐解く話から始まる。第4部\nでは、戦国大名の登場から織田信長の天下統一事業と豊臣秀吉政権の内外政策および江戸幕府の成立(一五世紀後\n半〜一六一六年)、江戸幕府の確立期二六一六〜一六八○年)における三つの危機(朝幕関係、外交、内政)、元\n第3部間岬圏国多様性と混沌の時代\n《概要》古代から中世にいたる土地制度、特に荘園公領制の成立と崩壊(一地一作人の原則につながる体制が成立\nし荘園公領制は完全に崩壊)の歴史の話から始まる。第3部では、平安時代後期の院政の展開と鎌倉幕府の成立、\n鎌倉幕府の政治史(将軍独裁、執権政治、得宗専制の三段階)、室町幕府の中央集権的な支配体制と一撲の影響お\nよび応仁の乱、中世後期の文化(南北朝の文化、北山文化、東山文化)などが叙述されている。\n第2部国側側画ユーラシア・ネットワークが切り結ぶ古代社会\n《概要》紀元前の中国の秦漢帝国の成立が、ユーラシア大陸の東西ネットワークを陸海で形成され、東端の日本列\n島にも影響を与えた話から始まる。第2部では、文献史学の成果をふまえて、弥生時代の邪馬台国、四〜五世紀の\n中国(宋など)や朝鮮半島(高句麗・百済・新羅・加耶諸国など)との関係、飛鳥時代における階唐の成立と日本\nの古代国家の成立過程、奈良・平安時代の内政、’○世紀前後の対外関係の変化と内政への影響などが叙述されて\nいる。\n\n禄文化から享保の改革(一六八○〜一七五一年)、田沼時代から天保の改革(一七八六〜一八五三年)などが叙述m\nされている。\n第5部近現代篇I一近代日本と万国対時\n《概要》「黒船」に代表される強大な軍事力を持った「文明国」アメリカのペリーが日本に来航し、「開国」を要求\nした話から始まる。第5部では、江戸幕府滅亡から明治新政府の成立(一八五三〜一八六八年)、明治政府の中央\n集権化と近代化政策の推進および国境の画定(一八六九〜一八七九年)、立憲国家の成立過程と大日本帝国憲法の\n制定(一八八○〜一八九○年)、日清戦争およびその直前直後の朝鮮との関係(一八九一〜’八九九年)、日清戦争\n後の中国情勢および日露戦争と韓国併合(一九○○〜一九二年)などが叙述されている。\n第6部近現代篇Ⅱ|日本と中国\n《概要》中国における辛亥革命および第一次世界大戦中における中国政府(哀世凱政権・段騏瑞政権)と日本政府\nとの「日支親善」の話から始まる。第6部では、「日本と中国」というタイトルの通り、日中関係史で二○世紀史\nが説明されている。第一次世界大戦前後における日中外交(一九二〜一九二七年)、田中・幣原の日中外交と軍\n部の台頭二九二七〜一九三一年)、満州事変から日中戦争へ二九三一〜一九四五年)、戦後の朝鮮戦争と日中国\n交正常化(一九四五〜一九七二年)などが叙述されている。\n\n勝田政治・眞保昌弘・仁藤智子・秋lll哲雄・夏目琢史・久保田裕次・石野裕子著『日本史概説一知る.出会う.考える」\n本書の時期幅は「通史的」であり、小,中。高の歴史の授業で学んできた内容を復習するとともに、より具体的\nな叙述となっていることは、各部各章の各見出しからも確認できる。また、本書の各部内には、コラム、参考文\n献、ブックガイド、おすすめ史跡紹介が設けられており、本文での学びから次の学びへのステップが用意されてい\nるところも特徴的である。ここでは、評者なりの論点を3つ提示したい。\n1「グローバルな視点」について\n本書の「編集後記」(本書一九七頁)によると、本書の試み(編集方針)は二つある。第一に.国中心史観に\n陥らないように戒め、常にグローバルな視点で歴史をみる」で、第二に「人物ではなく社会や時代の動きを客観的\nにみつめよう」というものである。ここでは、前者の「グローバルな視点」について問題にしたい・\n先述の通り、シラバスでは、日本史概説Bの授業において「国際関係(世界史)に留意する」ことが示されてい\nるが、日本史概説Aにおいてそれはない。ここでいう「国際関係(世界史)」がどのような意味で使われているか\nは吟味が必要であるが、日本史概説Bで扱う範囲にあたる本書第4部では、「世界史」を意識した視点が明確に盛\nり込まれている。例えば、応仁の乱の時期に、ユーラシア大陸も激動の時代に入ったことを提示し、その例とし\nて、一四四九年の明朝における土木の変や一四五三年のオスマン帝国が東ローマ(ビザンッ)帝国を滅亡させたこ\nとをあげる(本書九四頁)。また、第2章第1節には「海外からみた戦国時代」を設けたり(本書九七〜九八頁)、\n二本書への疑問\n\n本書の試み(編集方針)としての.国中心史観に陥らないように戒め、常にグローバルな視点で歴史をみる」\nを意識し具体化したものとなっている。第2部の「引用・参考文献」にあげられている北村厚「教養としてのグ\nローバル・ヒストリー』(ミネルヴァ耆房、二○一八年)で展開されているグローバル・ヒストリーを前提としたユーラシア・ネットワークの考え方を活用したものと考えられる。第2部以外の各部においても、ユーラシア・\n将軍徳川綱吉と同時期の世界の絶対君主との比較を促したり(本書二一頁)、大御所時代と同時期のフランス革\n命やナポレオンⅡボナパルトを取り上げたり(本書二七頁)するような工夫がなされている。国民国家が成立\n5一\nする以前の「世界史」という時空間が一貫して「グローバル」であったとすれば、第4部は「グローバルな視点で\n歴史をみる」ことにつながるであろう。\n一方で、本書第2部では、「グローバルな視点」が明らかに意図的に取り入れられている。第2部では、「ユーラ\nシ・ネットワーク」をキーワードに、折に触れて叙述がなされている。また、最後の段落には次のようなメッア・ネットワーク」ゞ\nセージが書かれている。\n文字に表された史料(文献)から、日本列島に初めて国家が形成される時代をみてみたが、この時代を考える\n際に、ユーラシア・ネットワークで結ばれる異域・異国を意識しておく必要があることを理解していただけた\nだろうか。日本列島の歴史を考えるときには、一国史観に陥ることなく、常に世界の変動を感じていなければ\nならない。古代という時代は、ユーラシア・ネットワークの極東に位置する日本・倭が他地域との交流や交通\nのなかで、初めて国家を形成し、展開していく時代である。歴史を傭撤するまなざしと、史料を精綴に読み込\nむ読解力、さらには多様性を柔軟に組み立てていく思考力をもって、新しい見地を切り開いてほしい(本書\n五五頁)。\n\n勝田政治・眞保昌弘・仁藤智子・秋山哲雄・夏目琢史・久保田裕次・石野裕子著「日本史概説一知る.出会う.考える』\n一方で、小・中.高の教科書では明記されることが少ない、学説をあげての説明が本書にはいくつかあることが\n興味深い。例えば、第3部では、鎌倉幕府の捉え方(国家観)について、権門体制論と東国国家論があることを紹\n介している(本書六七〜六八頁)。また、第4部では、諸説ある本能寺の変について、「信長と光秀の確執の要因に\nついては諸説あるが、近年では四国の長宗我部氏との対立が直接的要因となったという見方が有力となっている」\n2史資料の扱いと学説へのアプローチ\n先述の日本史概説Aのシラバスには、歴史的な史資料とのつながりを通じて学ぶことが示されている。本書全体\nの叙述が史資料を前提に害かれていることは言うまでもないが、具体的な史資料をあげての叙述は見られない。小・中・高の教科書においても、史資料をいくつかあげての記述がなされている。本書の紙幅の関係で、具体的な史資料をあげるスペースはなさそうであるが、授業内において補足資料があったり具体的な説明がなされていたり\n一方で、「グローバルな視点」をコラムで補っているところがいくつかある。例えば、第4部の「日本とキリス\nト教と世界とのつながり」(本書一○三頁)、「漂流民とロシア」(本書一二○頁)、第5部の「1867年のパリ万\n博と日本」(本書一三五頁)、「海を渡った「写真花嫁上(本書一五六頁)である。このようなコラムが各部に配置\nされることで、「グローバルな視点」は加えやすくなるが、各部のコラムの数や内容に統一性がない(〕\nネットワークを共通認識とした叙述ができれば、今までにない日本史概説になったのではないだろうか。第2部だ\nけで意識されたユーラシア・ネットワークの考え方が、結果として本書全体を見通したときに、浮いてしまってい\nしているものと考えたい。\nるのがもったいない。\n\nまた、第6部の最終章である第9章が、日中国交正常化がなされた一九七二年までの記述となっており、現行の\n中・高の歴史の教科書よりも叙述の終わりが早い。第6部の「補論冷戦と日本」には、第二次世界大戦後の冷戦\nと日本との関係が概略されている。また、コラムでは「高度経済成長」が取り上げられている。高度経済成長期の\n終焉が一九七三年、冷戦の終結が一九九一年ではあるが、その記述は五頁にも満たない。二○二○年度、大学に入\n学した現役生は創世紀生まれである。二○世紀後半の四半世紀の「現代史」も、生まれる前である。巻末の「索\n引」に一○頁割くのであれば、ここに一九七二年以降の現代史の叙述が欲しいと考えるのは評者だけであろうか。\n当該期の歴史も「補論」ではない「現代史」として叙述することで、先述の日本史概説Bのシラバスの【ねら里\nにある「現代をより理解するためには歴史学の知見が必要」がより深みを増す。\n代史を考える「しかけ」とし\nるか気になるところである。\n3「現代史」の叙述\n第6部は、一九二年から一九七二年までの日中関係史で叙述されている。日清・日露戦争後の日本が、欧米列\n強やソ連・ロシアなどとの関係で叙述されることは、中学・高等学校の歴史の教科書の常である。しかし、本書で\nは、中国以外の欧米列強などとのつながりはほぼ叙述されていない。これまでの学び方とは違う視点で、日本近現\n考える「しかけ」ととらえるも可能であるが、先述の「グローバルな視点」との折り合いをどのようにつけ\n(本書九九頁)と明記されている。前者のような両論併記や中世の権力について幕府だけに注目しない視点、後者\nのような大学生レヴェルでは「そうなの?」「長宗我部って誰?」といった内容は、先述のシラバスにも示されて\nいた「暗記一辺倒ではない」「考える学問」としての歴史学を学ぶことにいざなうであろう。\n\n勝田政治・眞保昌弘・仁藤智子・秋山哲雄夏目琢史・久保田裕次・石野裕子箸「日本史概説一知る.出会う。考える」\n2「歴史学的(な)思考(能)力」とは\n歴史を「学ぶ」「教える」意味として、学生が「歴史学的(な)思考(能)力」を身につけることが、先述の通\nり、日本史概説A・Bの授業のシラバスに明記されている。シラバスを読む限り、「歴史学的(な)思考(能)力」\nとは何かについては説明されていない。一方、本書を読み通した限りにおいても、その力についての説明は明記さ\nれていない。ただし、「編集後記」(本書一九七頁)には、次のようなことが記されている。\n1各担当教員は何を語るのか\n論点としてあげた三つのこと以外に触れておきたいこととして、本書には、学びの扉となる「歴史を学ぶ意味」\nを記したページがないことをあげておきたい。小・中.高の教科書には、最初のページを開くと必ず読者へのメッ\nセージとして「歴史を学ぶ意味」が記されている。また、例えば類書である、木村茂光・小山俊樹・戸部良一・深\n谷幸治編『大学でまなぶ日本の歴史」(吉川弘文館、二○一六年)には、冒頭に「オリエンテーション」という章\nを設けて、「読者のみなさんへ」「歴史の学び方」「歴史と現在」「本書の構成と特徴」を叙述している。\n本書を使用する日本史概説A・Bの授業のシラバスを読む限り、各教員の授業開始時に、「歴史を学ぶ意味」を\n説明することは明記されていない口文学部史学科に入学する学生たちに「歴史を学ぶ意味」を説く必要性はないの\n一肥》{叩〉\nか。本書を執筆した先生方に、歴史を「教える」意味とともにぜひ訊いてみたい。\n三日本史(歴史)を「学ぶ」意味、「教える」意味\n\n以上、評者の関心に引きつけて、拙い書評を行った。「無いものねだり」な指摘ばかりを連ね、評言は些末な点\nに終始したことは否めない。また、評者の力不足により、内容に対する誤解や曲解も多くあるかと思われる。著者\nおよび読者のご寛恕を乞う次第である。\n最後に、本書は、大学に入学した学生が日本史・歴史学を学ぶスタートラインに立つために用意された最初の\n「武器」である。その「武器」を生かすも殺すも学生次第であるが、その前提となるのが、教員たちの教えであり\n伴走である。同じ大学に所属する複数の教員が、一書をまとめる一大事業を、本書を刊行することで実現した。伴\n走する教員たちの学生への想いは、他の組織の教員集団よりも並々ならぬものと信じたい。歴史学を専門とする一\n研究者・教育者として、本書をきっかけに、時代に偏りなく、歴史をより深くより専門的に学んでみようと考える\n今、世界各国の人びととの連携・協力、そしてそれぞれの立場の人びとのひとつひとつの小さな努力の積み重\nねが、私たちに求められています。本書をきっかけに、ぜひもう一度日本の歴史を振り返り、現在のさまざま\nな問題に考えをめぐらしていただければ幸いです。\n連携・協力や小さな努力を積み重ねるために、本書の試み(編集方針)でもある一国中心史観に陥らず、グロー\nバルな視点で歴史をみることや社会や時代の動きを客観的にみつめる力が必要であると推察した。また、先ほど引\n用した第2部の最後に「歴史を傭撤するまなざしと、史料を精綴に読み込む読解力、さらには多様性を柔軟に組み\n立てていく思考力」(本書五五頁)と記されている。本書における「歴史学的(な)思考(能)力」とは、このよ\nうなことを意図しているのであろうか。歴史を学ぶことで、「歴史学的(な)思考(能)力」が身につき、その力\n\nはこのようなものであるという明確な提示が望まれる。\n\n勝田政治・眞保昌弘・仁藤智子秋lll哲雄・夏目琢史・久保田裕次・石野裕子箸「日本史概説一知る.出会う。考える』\n学生が増えることを祈るばかりである。\n註\n(1)近年、大学生が読み活用することを想定して、一書で日本通史を叙述するものとしては、須田努・清水克行「現代を生きる日\n本史」(岩波書店、二○’四年)、木村茂光・小山俊樹・戸部良一・深谷幸治編「大学でまなぶ日本の歴史」(吉川弘文館、\n二○’六年)などがあげられるcまた、東北学院大学文学部歴史学科編「大学で学ぶ東北の歴史」(吉川弘文館、二○二○年)\nは、旧石器時代から東日本大震災までの日本通史を、東北地方との関連性を必ず設けて叙述している。\n(2)「国士舘大学文学部ホームページ考古・日本史学専攻(コース)紹介」の「カリキュラム」。\n胃Sm己君乏言・百百豐弄自画9頁駐呂ごP魚急刷さg胃目ggg目隅呂尉sqlg仔閏開○さ唱苛冒凰目盲目胃旦(二○二○年\n「国士舘大学君gシラバス」宮g駒ご冨巴の民。言』普涛9.月ぢあ筐号扁弓8・麗冒(二○二○年一○月三一日閲覧)の「日本史概\n説A(日本歴史Aこ「日本史概説B(日本歴史B)」。\n第6部のみに、出典を示す表記がある。例えば、本書一六三頁に「(久保田2016ことある。\n小田中直樹「世界史から考える」(同・帆刈浩之編「俄界史/いま、ここから」山川出版社、二○一七年)三一五頁。\nグローバル・ヒストリーを前提とした通史的な大学生向けテキストとしては、世界史ではあるが、大阪大学歴史教育研究会編\n『市民のための枇界史』(大阪大学出版会、二○一四年)がある。\n二○’八年三月告示の次期学習指導要領が、高等学校では二○二二年より施行される。新科目として設定される「歴史総合」\n(必修)では、時代の変化を示す諸資料(遺物、文書、図像など)から単元を貫く問いを立てること、「日本史探究」(選択)で\nは、諸資料一歴史資料)を活用して時代を通観する問いを立て仮説を表現すること、がそれぞれ明記されている。高等学校の\n段階から、歴史の授業において史資料を前提とした学び方がより重視される方向性が示されている。\n現行の教科書において、例えば、中学校の教科書「新編新しい社会歴史」(東京書籍、文部科学省二○一五年検定済)、高\n等学校の教科書「詳説日本史B」〈山川出版社、文部科学省二○一六年検定済)ともに、二○二年の東日本大震災までそれぞ\n一○月三一日閲覧)\n\n廷一三\nへ\nは知っているが、\nことも多々ある。\n評者は、現勤務先(前出)で「現代日本の歴史」という選択授業を担当している。最初の二回は、「歴史を学ぶ意味」に関わる\n授業を実施している。その中である学生が、授業の振り返りとして次のように記している。\nなんで歴史の授業があるのだろう、勉強して何になるのだろう、と思ったことがありましたが、授業を受けて少しその疑\n問が解決された気がします。まずは「歴史を学ぶⅡ昔の出来事を暗記してテストでアウトプットして寝たら忘れる」とい\nうのを前提として考えていたことが間違っていたことに気づきました。\n教員は、「昔の出来事を暗記してテストでアウトプットして寝たら忘れる」という部分に注目して、歴史は暗記するだけのも\nのではないと説きたがるがゞ「なんで歴史の授業があるのだろう、勉強して何になるのだろう」という学生の問いに応えること\nを忘れがちである。自戒を込めて。\n歴史を「教える」「学ぶ」意味については、皆川雅樹「歴史を「教える」「学ぶ」I歴史教育のナワバリヘの挑戦l」(前川修\n一・梨子田喬・皆川雅樹編著『歴史教育「再」入門」(清水書院、二○’九年)で整理・考察したので、そちらを参照されたい。\n歴史・歴史学を学ぶ意味や歴史・歴史学で身につくものについて、近年、大学生向けに刊行したものとして、大学の歴史教育\nを考える会編「わかる.身につく歴史学の学び方」(大月書店、二○ヱハ年)がある。なお、高等学校において「歴史的思考\n力」を身につけることが必要であることが提示されている。池尻良平・山内祐平「歴史的思考力の分類と効果的な育成方法」\n(日本教育工学会第二八回全国大会講演論文集、長崎大学、二○一二年)、鳥山孟郎・松本通孝編「歴史的思考力を伸ばす授業」\n(青木書店、二○一二年)、永松靖典編「歴史的思考力を育てる』(山川出版社、二○一七年)など参照。\n(二○二○年六月刊、北樹出版、一二○頁、二四○○円十税)\n評者は、現勤務先(産業能率大学経営学部)で「現代日本の歴史」という選択授業を担当している口本授業で扱うのは、\n’九四五〜二○二○年である。「高度経済成長」はもちろんのこと、バブル経済や地下鉄サリン事件についても実態やその背景\nは理解できていない。その理由の1つとして、戦後史は、小・中.高の歴史の授業の最後に扱う内容で、授業計画上駆け足に\nなりがちで、出来事の羅列の終わる傾向が強いからである。学生のコメントに「高度経済成長や三種の神器、3Cなどの言葉\nっているが、それが人々の生活にどのように影響があったのかは考えたこともなかった」といったニュアンスで書かれる\nれ記述がある。\n\n\n"}]}, 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書評 : 勝田政治・眞保昌弘・仁藤智子・秋山哲雄・夏目琢史・久保田裕次・石野裕子著『日本史概説 : 知る・出会う・考える』
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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本文 (2.0 MB)
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Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||
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公開日 | 2021-07-28 | |||||
タイトル | ||||||
言語 | ja | |||||
タイトル | 書評 : 勝田政治・眞保昌弘・仁藤智子・秋山哲雄・夏目琢史・久保田裕次・石野裕子著『日本史概説 : 知る・出会う・考える』 | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | Book Review : “A Brief History of Japan” | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||
見出し | ||||||
大見出し | 特集『日本史概説 : 知る・出会う・考える』公刊とその成果 | |||||
言語 | ja | |||||
見出し | ||||||
大見出し | Special Issue | |||||
言語 | en | |||||
著者 |
皆川, 雅樹
× 皆川, 雅樹 |
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著者ID | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | J-GLOBAL ID : 201901019940088176 | |||||
著作関係者詳細 | ||||||
産業能率大学 経営学部 (p.135「執筆者紹介」より) | ||||||
元資料の情報 | ||||||
『日本史概説 : 知る出会う考える』勝田政治 [ほか] 著 東京 : 北樹出版 , 2020.6 | ||||||
書誌情報 |
国士舘史学 en : Kokushikan shigaku 巻 25, p. 5-18, 発行日 2021-03-20 |
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出版者 | ||||||
出版者 | 国士舘大学日本史学会 | |||||
NCID | ||||||
収録物識別子タイプ | NCID | |||||
収録物識別子 | AN10466645 | |||||
論文ID(NAID) | ||||||
関連タイプ | isIdenticalTo | |||||
識別子タイプ | NAID | |||||
関連識別子 | 40022544804 | |||||
NDC | ||||||
主題Scheme | NDC | |||||
主題 | 210 | |||||
NDC | ||||||
主題Scheme | NDC | |||||
主題 | 019.9 | |||||
フォーマット | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | application/pdf | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | VoR | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 | |||||
キーワード | ||||||
主題 | 『日本史概説』, 概要, 論点, 課題 | |||||
注記 | ||||||
表紙の論題 : 書評『日本史概説』 |